別府湾行 [旅]
2011年 別府湾行
昔の職場の仲間がOB有志に呼びかけ、大同窓会が別府湾で開催されて出席した。職場である支店開設から70年、古希の会だという。総勢五一名、こんな会の事例はあまり聞かない。幹事の苦労も並みではなかっただろう。
自分が本当の古稀であるのは、偶然のことだが、決して私のための会ではない。が、大分とあれば私には縁ある土地。多少の体調不良は、この際目をつぶることにした。
想い起こせば、たしかに今から30年前、私が勤めていたときに丁度支店開設40周年、本店が創立60周年だったので、営業キャンペーン「吉四六(きっちょむ)運動」というのを皆でやった。
吉四六さんは、大分民話の人気者で知恵者であるが、目出度い吉と四と六が運動のネーミングにぴったりだったのである。
さすれば、今回は支70周年、本店90周年ということになる。道理である。光陰矢の如し。
それにしても30年は長い。往時茫々である。大分では二年勤めた。長男だけ東京に残し家族四人で赴任した。懐かしい日々と人との思い出が山ほどある。
別府行に寄せて、腰折れ三首。
冬夕焼け別府湾は暮れわたる30年前の記憶のとおりに
友は皆30年前の顔をして 麦焼酎のかぼす割り呑む
朝日さす日出の出島の的山荘 城下鰈は今もあるらむ
昔の職場の仲間がOB有志に呼びかけ、大同窓会が別府湾で開催されて出席した。職場である支店開設から70年、古希の会だという。総勢五一名、こんな会の事例はあまり聞かない。幹事の苦労も並みではなかっただろう。
自分が本当の古稀であるのは、偶然のことだが、決して私のための会ではない。が、大分とあれば私には縁ある土地。多少の体調不良は、この際目をつぶることにした。
想い起こせば、たしかに今から30年前、私が勤めていたときに丁度支店開設40周年、本店が創立60周年だったので、営業キャンペーン「吉四六(きっちょむ)運動」というのを皆でやった。
吉四六さんは、大分民話の人気者で知恵者であるが、目出度い吉と四と六が運動のネーミングにぴったりだったのである。
さすれば、今回は支70周年、本店90周年ということになる。道理である。光陰矢の如し。
それにしても30年は長い。往時茫々である。大分では二年勤めた。長男だけ東京に残し家族四人で赴任した。懐かしい日々と人との思い出が山ほどある。
別府行に寄せて、腰折れ三首。
冬夕焼け別府湾は暮れわたる30年前の記憶のとおりに
友は皆30年前の顔をして 麦焼酎のかぼす割り呑む
朝日さす日出の出島の的山荘 城下鰈は今もあるらむ
独吟半歌仙 図書館の巻 [旅]
図書館の巻
発句 図書館の冷房効きて台湾史
脇 冷やし中華で決める旅先
第三 台北の土鍋ふかひれ舌焼きて
四 水遣るたびに香草匂う
五 賑わいの士林夜市無月なり
六 端折 蓮の実つまみ啜るウーロン
裏一 折立 秋立つやお御籤を引く龍山寺
二 孔子廟にて学生祈る
三 小姐の足裏押しの心地よき 小姐・シャオチェ 若い女性のこと
四 福の字刻した指輪煌めく
五 清朝の流転の秘宝幾千里
六 草原走る蒼き狼
七 山腹の故宮を照らす冬の月
八 あっと息のむ翡翠白菜
九 総統の衛兵若く凛として
十 客家故郷は波濤の彼方 客家・漢族の「名門貴族」の子孫
十一 木蓮と並んで咲くや花こぶし
挙句 美島再見春惜しみつつ 美島・台湾のこと
これも発句と第三が観音開き。「台北の土鍋」を「飯店の」にすればよかったのか。他にもある。舞台が中国、モンゴルまで広がったのが救い。
木蓮とこぶしを並べたがどちらが中国でどちらが台湾か。
台湾史を勉強したり一国二制度などの問題を考えるためでなく、純粋に観光で訪れた台湾はとても楽しく、食べ物は美味しかった。狙い目の鱶鰭料理は格別だったが、欠点は値段が高いこと。台湾まででかける必要は全くなかった。
発句 図書館の冷房効きて台湾史
脇 冷やし中華で決める旅先
第三 台北の土鍋ふかひれ舌焼きて
四 水遣るたびに香草匂う
五 賑わいの士林夜市無月なり
六 端折 蓮の実つまみ啜るウーロン
裏一 折立 秋立つやお御籤を引く龍山寺
二 孔子廟にて学生祈る
三 小姐の足裏押しの心地よき 小姐・シャオチェ 若い女性のこと
四 福の字刻した指輪煌めく
五 清朝の流転の秘宝幾千里
六 草原走る蒼き狼
七 山腹の故宮を照らす冬の月
八 あっと息のむ翡翠白菜
九 総統の衛兵若く凛として
十 客家故郷は波濤の彼方 客家・漢族の「名門貴族」の子孫
十一 木蓮と並んで咲くや花こぶし
挙句 美島再見春惜しみつつ 美島・台湾のこと
これも発句と第三が観音開き。「台北の土鍋」を「飯店の」にすればよかったのか。他にもある。舞台が中国、モンゴルまで広がったのが救い。
木蓮とこぶしを並べたがどちらが中国でどちらが台湾か。
台湾史を勉強したり一国二制度などの問題を考えるためでなく、純粋に観光で訪れた台湾はとても楽しく、食べ物は美味しかった。狙い目の鱶鰭料理は格別だったが、欠点は値段が高いこと。台湾まででかける必要は全くなかった。
独吟半歌仙 冬着詰めの巻 [旅]
冬着詰めの巻
発句 冬着詰め鞄膨らむコナ空港
脇 時雨暖か「はにかみ」の山
第三 船酔いや鯨まぼろし潮吹きて
四 時差ぼけ癒えず居睡りばかり
五 月面を歩む心地やキラウエア
六 端折 火神の髪にレフア冠
裏一 折立 野生化すシュガーケーンの穂は揺れて
ニ 遥かに消えた移民の野望
三 甲羅干し双乳は砂に潰れけり
四 オイル塗る手を軽く叩かれ
五 島巡りガイドの美声アロハオエ
六 カヌーの舳先蛸の彫刻
七 津波禍の心に懸かる夏の月
八 暑さに負けてワイン控えめ
九 酣のディナークルーズフラダンス
十 頬を撫でゆく南風の爽やか
十一 緋桜や冠雪高きマウナケア
挙句 島の浴衣は花衣なり
これは、観音開きを少し免れている。ホエールウオッチングでは、鯨は遠くて良く見えずまぼろしの如くであった。常夏のハワイでは、季語が実態と合わないので苦労する。
冬のハワイ行は、成田までが寒く自然ハワイに着いたときは、夏着に着替えるので鞄が膨らむことになる(発句)。島の緋桜の花見は、きっと浴衣になろう。花衣だ(挙句)。
偶然だが、発句と挙句が同じ「衣服」で呼応して付いた。
本などによればかならず呼応しなくとも良いと書いてあるが、なんとなくうれしい。
はにかみ山・何時も雲がかかって山頂が見えないのでついた山のあだ名。ハワイ島にある。
キラウエア・ハワイ島の火山。カルデラ、クレーターが月面のよう。
レフア・オヒヤの木(ハワイ州の木)に咲く花がレフア
カヌーの舳先には種々の彫り物が刻まれているが蛸は珍しい。
緋桜・寒緋桜のこと。正月桜、沖縄桜とも。
ママウナケア・ハワイ島では最も高い(4205m)山
発句 冬着詰め鞄膨らむコナ空港
脇 時雨暖か「はにかみ」の山
第三 船酔いや鯨まぼろし潮吹きて
四 時差ぼけ癒えず居睡りばかり
五 月面を歩む心地やキラウエア
六 端折 火神の髪にレフア冠
裏一 折立 野生化すシュガーケーンの穂は揺れて
ニ 遥かに消えた移民の野望
三 甲羅干し双乳は砂に潰れけり
四 オイル塗る手を軽く叩かれ
五 島巡りガイドの美声アロハオエ
六 カヌーの舳先蛸の彫刻
七 津波禍の心に懸かる夏の月
八 暑さに負けてワイン控えめ
九 酣のディナークルーズフラダンス
十 頬を撫でゆく南風の爽やか
十一 緋桜や冠雪高きマウナケア
挙句 島の浴衣は花衣なり
これは、観音開きを少し免れている。ホエールウオッチングでは、鯨は遠くて良く見えずまぼろしの如くであった。常夏のハワイでは、季語が実態と合わないので苦労する。
冬のハワイ行は、成田までが寒く自然ハワイに着いたときは、夏着に着替えるので鞄が膨らむことになる(発句)。島の緋桜の花見は、きっと浴衣になろう。花衣だ(挙句)。
偶然だが、発句と挙句が同じ「衣服」で呼応して付いた。
本などによればかならず呼応しなくとも良いと書いてあるが、なんとなくうれしい。
はにかみ山・何時も雲がかかって山頂が見えないのでついた山のあだ名。ハワイ島にある。
キラウエア・ハワイ島の火山。カルデラ、クレーターが月面のよう。
レフア・オヒヤの木(ハワイ州の木)に咲く花がレフア
カヌーの舳先には種々の彫り物が刻まれているが蛸は珍しい。
緋桜・寒緋桜のこと。正月桜、沖縄桜とも。
ママウナケア・ハワイ島では最も高い(4205m)山
独吟半歌仙 東京に野分の巻 [旅]
東京に野分の巻
発句 東京に野分来たりてソウル晴れ
脇 アンニョンハセョ海東の月 海東・韓国の別称扶余・昔の百済
第三 いにしえの韓の金風頬吹きて
四 久方ぶりの親子三人
五 冬ざれの扶余の青年テンギモリ テンギモ リ・ポニーテールのよ
うに後ろで束ねた 昔のちょん髷
六 端折 春待つ新羅奈良里に似て 新羅・今の慶州。
裏一 折立 秋澄みて魚鐸あでやか海印寺
ニ 韓式風呂で眼が合う露人
三 昌徳宮ガイドのアガシ酔芙蓉 アガシ・お嬢さん
四 敬語正しきチマチョゴリなり
五 魚市の小蛸釜山の雨に逃げ
六 キムチ肴に眞露酌む夜
七 十字架の赤きネオンや夏の月
八 船遊びにて落花岩観る 落花岩・白村江の戦いで三千人の官女が河へ身を投げたという。
九 ハルモニの絵葉書売りや石窟庵 ハルモニ・おばあさん
十 平安を呼ぶ半島の蝶
十一 バスの窓槿花毎朝青瓦台
槿花一朝という言葉はある。槿花毎朝は無い。槿は毎朝次々と花をつける。造語。
挙句 天気図動き二都に春来る
旅の半歌仙を独吟でやってみた。案の定、うまくいかない。つい観音開きになる。つまり前々句にも付いてしまう。テーマが旅だからやむをえないのか、やりようがあるのか分からない。
それを無視して、韓国、台湾、ハワイと三巻も巻いてしまった。芭蕉のいうところの、一歩も後に帰る心なし、ただ先へ行く心なればなり」という連句の基本をはずれている。
はじめての韓国はなぜかどこもかしこもなつかしい感じがした。その感覚を連句でも愉しんだことにして、それで良しとしたい。
発句 東京に野分来たりてソウル晴れ
脇 アンニョンハセョ海東の月 海東・韓国の別称扶余・昔の百済
第三 いにしえの韓の金風頬吹きて
四 久方ぶりの親子三人
五 冬ざれの扶余の青年テンギモリ テンギモ リ・ポニーテールのよ
うに後ろで束ねた 昔のちょん髷
六 端折 春待つ新羅奈良里に似て 新羅・今の慶州。
裏一 折立 秋澄みて魚鐸あでやか海印寺
ニ 韓式風呂で眼が合う露人
三 昌徳宮ガイドのアガシ酔芙蓉 アガシ・お嬢さん
四 敬語正しきチマチョゴリなり
五 魚市の小蛸釜山の雨に逃げ
六 キムチ肴に眞露酌む夜
七 十字架の赤きネオンや夏の月
八 船遊びにて落花岩観る 落花岩・白村江の戦いで三千人の官女が河へ身を投げたという。
九 ハルモニの絵葉書売りや石窟庵 ハルモニ・おばあさん
十 平安を呼ぶ半島の蝶
十一 バスの窓槿花毎朝青瓦台
槿花一朝という言葉はある。槿花毎朝は無い。槿は毎朝次々と花をつける。造語。
挙句 天気図動き二都に春来る
旅の半歌仙を独吟でやってみた。案の定、うまくいかない。つい観音開きになる。つまり前々句にも付いてしまう。テーマが旅だからやむをえないのか、やりようがあるのか分からない。
それを無視して、韓国、台湾、ハワイと三巻も巻いてしまった。芭蕉のいうところの、一歩も後に帰る心なし、ただ先へ行く心なればなり」という連句の基本をはずれている。
はじめての韓国はなぜかどこもかしこもなつかしい感じがした。その感覚を連句でも愉しんだことにして、それで良しとしたい。
足弱 [旅]
2006年 足弱
足弱はあなたのことよと妻笑ふ
高尾山に登った時に作った句。運動不足で足が弱くなっている。昔の男は良く歩いたに違いない。女を足弱と決めつけている。
手弱女と足弱とは異な女郎花
女性の別称に弱いという字が使われているのは変、と異議を唱えている。女は強いのだ。もともと女だったのに、むりやり男にされたために、男の身体は元々弱いのだ。
五円でも利息は利息メガバンク
普通預金の決算で利息が五円ついてきた。窓口の女性に嫌味を言ってやった。五円でも利息には違いないョねと。これを犬の遠吠えという。
リモコンや我は弓手に妻右手に
夜、冷房のリモコンを二つの寝床の真ん中に置く。暑くなったと思った方がオンのボタンを押す。
足弱はあなたのことよと妻笑ふ
高尾山に登った時に作った句。運動不足で足が弱くなっている。昔の男は良く歩いたに違いない。女を足弱と決めつけている。
手弱女と足弱とは異な女郎花
女性の別称に弱いという字が使われているのは変、と異議を唱えている。女は強いのだ。もともと女だったのに、むりやり男にされたために、男の身体は元々弱いのだ。
五円でも利息は利息メガバンク
普通預金の決算で利息が五円ついてきた。窓口の女性に嫌味を言ってやった。五円でも利息には違いないョねと。これを犬の遠吠えという。
リモコンや我は弓手に妻右手に
夜、冷房のリモコンを二つの寝床の真ん中に置く。暑くなったと思った方がオンのボタンを押す。
安曇野にて [旅]
安曇野へ [旅]
高 尾 山 に 登 る [旅]
烏山駅と龍門の滝 [旅]
2005年
我が故郷へ行く烏山線は,宇都宮から東へ宝積寺を経て那須郡烏山町までのワンマンカーである。かつて銀河鉄道999が走った。上の写真がその終点烏山駅、下は駅の近くにある龍門の滝。ナイヤガラとまではいかないが、古い龍伝説のあるりっぱな滝だ。
故郷を出て半世紀が過ぎた。たまに訪れると友は勿論、山や川そして空気が懐かしい。十月一日に南那須町と合併して那須烏山市になるというが、すすむ過疎化を止めることが出来るだろうか。
伊勢近し尾花が上の鰯雲
と詠んだ早野巴人は下野国烏山の人。号は夜半亭。蕪村の師(!)であった。故郷の偉人には遠く及ばぬが・・・・・。
龍棲みて水嵩増すや秋の滝
ふるさとの友の冗談厄日かな
故郷の友と浴びけり滝飛沫
短夜や平均律の果てしなく
ふるさとの少女はおうな風祭 厄日・二百十日
我が故郷へ行く烏山線は,宇都宮から東へ宝積寺を経て那須郡烏山町までのワンマンカーである。かつて銀河鉄道999が走った。上の写真がその終点烏山駅、下は駅の近くにある龍門の滝。ナイヤガラとまではいかないが、古い龍伝説のあるりっぱな滝だ。
故郷を出て半世紀が過ぎた。たまに訪れると友は勿論、山や川そして空気が懐かしい。十月一日に南那須町と合併して那須烏山市になるというが、すすむ過疎化を止めることが出来るだろうか。
伊勢近し尾花が上の鰯雲
と詠んだ早野巴人は下野国烏山の人。号は夜半亭。蕪村の師(!)であった。故郷の偉人には遠く及ばぬが・・・・・。
龍棲みて水嵩増すや秋の滝
ふるさとの友の冗談厄日かな
故郷の友と浴びけり滝飛沫
短夜や平均律の果てしなく
ふるさとの少女はおうな風祭 厄日・二百十日